『Morph the Cat』は、スティーリーダンの冷笑的な2本柱のひとりドナルド・フェイゲンによるソロ・アルバム。1993年の『Kamakiriad』以来となるまだ通算3枚目のソロだ。本作でフェイゲンはより社会的な観察力と私的な暴露をテーマとした。だが、やはりこのアルバムでも聞き手の心を強くとらえるのは曲の暗いきらめきと強引なグルーヴで、フェイゲンの真剣な意図が伝わってくる。壮大なほのめかしを込めたタイトルは、フェイゲンが表現するところによると「巨大でく幽霊のような猫らしきもの」にちなんでつけられた。これはマンハッタンの空を漂っているそうで、ウッディ・アレン『ニューヨーク・ストーリー』に登場する猫のようにおしゃべりな母親と似ていなくもないが、本作はポスト9.11の世界で感じられる不安と喪失感において、皮肉や斜に構えた部分を喪失してはいないことが反映されている。ここにはフェイゲン自身も含めた死、そして政治的抑圧のビジョンがある。空港の女性セキュリティ係とのコミカルでロマンチックな出会いもある。本質を捉えられたレイ・チャールズの幽霊との敬意に満ちた対峙もある。「さて、あんたは教会を引き入れたが、何の疑問も残さない/あんたが叫びたがるのはどんな種類の愛なのかを」。フェイゲンのぶっ飛んだ感覚が尊いものとじゃれ合う時でさえも、音楽はとても豊かで生き生きと輝き、それぞれの曲の力を否定することなどできはしない。–Lloyd Sachs

 ・ Amazon : Morph the Cat (2005)

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DISK(CD) 1. 01. Morph The Cat 02. H Gang 03. What I Do 04. Brite Nightgown 05. Morph The Cat (Reprise) 06. Security Joan 07. The Night Belongs To Mona 08. Mary Shut The Garden Door 09. Morph The Cat (Reprise)